【図解】コレ1枚でわかるクライアントの歴史
1950年代、ビジネス・コンピューターの黎明期、ユーザーインターフェイスは、キーボードとプリンターが一体となったテレタイプ端末と言われるものが主流だった。その後、1970年代に入り、タイムシェアリングの普及と共にブラウン管式のディスプレイ端末が使われるようになる。しかし、表示できるのはモノクロの文字だけだった。その後、カラーで文字表示できる端末も登場したが、いずれも「文字(テキスト)」という限られた範囲での表現力しか持たなかった。
1980年代に入り、ビジネスの現場でパーソナル・コンピューターが使われるようになる。そこで、このPCを当時主流となっていた大型のメインフレーム、オフコンやミニコンと言われた小型コンピューターの端末として使われるようになる。当初は、PC上に端末エミュレーターを動かし「テキスト端末」として使われるのが一般的だった。その後、ミニコンやオフコンに加え、PCサーバーが登場する頃になると、主要な業務処理や組織で共有すべきデータの保管は、上位のコンピューターに任せ、入力画面のレイアウトやデータの加工・編集といった比較的軽いアプリケーション処理やユーザーインターフェイスに関わる処理はPCに任せ、上位のコンピューターと役割分担するクライアント・サーバー方式が普及した。
当時、ネットワークの速度は遅く、コンピューターの処理能力も高くなかった。そのため、上位のサーバー・コンピューターで表現力豊かな画面データを生成し送るのは、現実的ではなかったためだ。そこで、ユーザーの手元にあるPCの処理能力を活かし、高い表現力を手に入れようとした。その代表的なソフトウェアのひとつが、1989年に登場したグループウェアLotus Notesだ。
クライアント・サーバー方式の登場により、ユーザーは高い表現力を手に入れることができたが、その一方で、サーバー・アプリケーション毎にクライアントPCに対応するアプリケーションを導入しなければならない。そのため、各アプリケーションについてバージョンアップやプログラム修正のたびに全てのクライアントPCをアップデートしなければならないため運用管理負担が増大することになる。このような多くのクライアント・アプリケーションを抱え込んだPCは、「Fat Client(でぶっちょクライアント)」とも言われている。
1995年、Windows95が、登場する。これには、WebブラウザーであるInternet Explorerが、無償で付いてきた。そこで、このブラウザーをクライアント機能として使おうというWebシステムという考え方が生まれてきた。
ブラウザーを使えば、テキスト端末より高い表現力が得られる。しかも、PCには、ブラウザーを導入するだけなので、クライアント・アプリケーションの運用管理負担から解放される。そんな理由から、Webシステムが、普及することになった。しかし、当時のブラウザーは、静的な文書の閲覧が主な用途であり、また、回線の速度も遅かったことからサーバー・コンピューターから大きな画面データを送ることは現実的ではなかった。そのため、レイアウトの自由度や画像を使うなどにより、テキスト端末より表現力は高まったもののクライアント・サーバーほどの表現力を持たせることはできなかった。そのため、クライアント・サーバーと併存することになる。なお、1996年、クライアント・サーバーで一世を風靡したLotus NotesもLotus Notes/Dominoという名称で、ブラウザーから使える機能をリリースしている。
回線速度の向上やインターネットの普及とともに、ブラウザーで高い表現力を実現しようという動きが始まる。それが、プラグイン・プログラムを使う方法だ。ブラウザーは、それ自体、静的な文書の閲覧のためのものだった。ただ、外部プログラムとのインタフェイスをオープンにしていたことから、これを使って高い表現力を実現しようという方法が生まれた。1996年に登場したFlashは、その先駆けとなった。Flashの登場により、ブラウザーであってもPCネイティブと遜色のない表現力を実現できると言うことで、その後Flashは広く普及してゆく。Flash同様のプラグインとして、その後、SilverlightやCurlなどが登場する。
これらプラグイン・プログラムで動作するアプリケーション・プログラムをRIA(Rich Internet Application)、そのクライアントとなるプラグインが動作するブラウザーをRIC(Rich Internet Client)と呼ぶ。
このような方法で表現力を高めたブラウザーではあるが、その表現を規定するHTML言語は、1997年に正式勧告されたHTML4.0、1999年に若干の修正が加えられたHTML4.01以降、大きな変更が加えられないままに使われてきた。それをプラグインで機能を補完してきたわけだが、回線の高速化やモバイル・デバイスの普及など当時の状況とは大きく変わってしまい、プラグインでの対応にも限界が見え始めた。そのため、2014年、プラグインを使わなくてもブラウザーの機能だけで高い表現力やモバイル・デバイスとの対応を可能にするHTML5.0が勧告されることとなった。
HTML5.0、その前身となったAjaxについては、後日「コレ1枚」で紹介する。